第六十九番 八屋山
普門寺(曹洞宗)
御本尊 聖観世音菩薩
御真言 おん あろりきゃ そわか
御詠歌 ふだらくや 大慈大悲に いだかれて はちやみのりて 紫雲たなびく
縁起
天平十二年(七四〇)行基菩薩が行脚中に、芸州吉田に錫を留められた折、時おり河底から一道の神光を発し山頂の樹上に掛る、と村人の話を聞き、七昼夜修禅念誦して、老翁より暗示を受け、漁師に河底へ網を下させるや、観音像が上った。その妙相端厳に歓喜し、その地に大士堂を建てさせて尊像を安置した。
天台僧頼円、このお堂に錫を留め、雪中に観行し今にも餓死せんとする時、八屋柿を手にした老翁が顕われて、命を救われた。山号はこれに由来する。毛利元就公、吉田城にありし時、祈願することあってお堂に通夜し、暁夢に大士の妙相が顕われ軍配団扇を授けられた。その孫輝元公、久しく続子に恵まれず、お堂に祈って一男、のちの長門の守に恵まれた。
その後、可部・打越・広瀬と各地を移転し、福島正則公によって元和八年(一六二二)の春に現在地に移された。古えより三十三年を以って、開帳の一期とされる。